糠床ブログ

不定期

続・懐中電灯で照らされて目を覚ます

(注意:ゲームのネタバレを含む)

今週の木曜までEpicGamesがRemedy Entertainmentの傑作アクションゲームAlaneWakeの続編『AlanWake's American Nightmare』を無料配布している

元来はXBLAというXbox360で配信専用タイトルとして開発された経緯があり

ゲームをしばらく遊べば分かるのだがDLCではなく単独作品、続編と言うには随分と低カロリーな作りである

アークザラッドみたいだ、配信専用ソフトであったので容量・規模ともに前作より控え目なのである

今作の舞台はアリゾナ州の片隅ナイトスプリングス、前作ラスト付近にチラリと現れた自身の邪悪な分身ミスタースクラッチによってアランはここへと飛ばされる所からはじまる

ストーリーは短く、前作のような物語性は薄い、当時、期待して遊んだ自分は金返せ!とまではいかないが、これでAlanWakeという作品が終わってしまう事が勿体ないと思った

完全に蛇足に思えるAmerican Nightmareだが、その内容が面白い考察を与えてくれる

まず、タイトルであるAlanWake's American Nightmare、前作はAlanWakeで所有格語尾である『's』が付いている

前作からの続編であれば、AlanWake American Nightmareになりそうだが、この所有格は作品に対して付けられているのだ、アランは売れっ子作家で言わば、作品の面白さの保証としてその名を冠せられている訳である(スティーブン・キングの~みたいな)

そしてそういう事をする作品というのは面白くない事が多い、プレイすれば分かるのだがストーリー展開もなかなかに酷い、褒められる脚本ではないだろう

率直に言えばあらゆる面が前作以下である、遊べない訳ではないのだがAlanWakeの新作、前作の物語の続きを知りたい気持ちに動かされている面が多分にある

ゲームを最後まで遊べば、アランが迎える物語の結末を見ることができる、邪悪なミスタースクラッチは消滅し、妻アリスとの感動の再会、言葉より雄弁な口づけ、二人の心境を代弁するような夜明け______

まぁ、ベタな終わり方である、ぶっちゃけ打ち切りエンドみたいだ

ちょっと思いつくままに、問題点を挙げると

闇に囚われた人間と言うには無理のある無茶苦茶な敵、突然脈絡もなく現れるやたらセクシーな女性NPC達、原稿を集めるとアンロックされる武器ロッカー、何度も補充されるアイテム、あるまじき時間ループ構造によるステージの使いまわし、ミスタースクラッチとの直接対峙なしの決着

等々、いくつも浮かんでくる、書き出してると腹が立ってきた

こんなクォリティのゲーム出すなんて、どうなんだ!脚本は誰だ!

そう、脚本家は誰なのか

このゲーム自体がアランの書いたディパーチャー(ゲーム内でアランが執筆した小説であり、AlanWakeというゲーム)に連なるものではない、もっと言えば脚本家はアランではない

このAlanWake's American Nightmareを執筆したのはミスタースクラッチだと考えられる

今作で拾う原稿は罫線が引かれており、多分ノートに書かれているのだ、アランは作品を作る時にタイプライターを用いる、タイプライターは専用の紙でなければ破れてしまう

ゲームの冒頭でアランが創作していたロッジがタールの沼に沈んでいくのだが、これはアランに創作させないと言う事と、タイプライターの消失を意味する

ミスタースクラッチがアランに代わり執筆した悪夢の世界、それがAlanWake's American Nightmareというゲームなのだ

創作の主導権をミスタースクラッチに奪われたという事はアランは敗北したのか?と言うと、違うと思う、ミスタースクラッチは書いていく中で、現実との整合性があり歪みや澱みがなく変化を起こせる物語を書けなかった

ミスタースクラッチ自身に書かせる、それがアランが彼を倒すために選んだ手段なのではないだろうかと考えている

現に自分の作りだした世界でありながら、ミスタースクラッチは安っぽい悪党にしかなれなかった

この歪な作品は、アランがまだ戦いの中にいるという事を伝えるものだったのではないかと、そして戦いはアランが優位である事も伝えているのだ、完全な勝利と帰還はまだだが、そう遠くない

 

Remedyの新作であるControlのDLCにAWEというものがあり、タイトルがAlanWakeのパッケージと酷似しており、AWの部分はAlanWakeではないかとファンサイトで話題になっていた

今度こそ、アランは帰ってくるのかもしれない